こんにちは、eMseedの浅田です。
本日は、撮影サービスの1つであるプロフィール写真について、日頃意識していることをお話ししたいと思います。
先日、出張撮影でプロフィール写真の撮影現場に行ってきたので、そちらのレポートも兼ねてお届けします。
私の普段の撮影スタイルは、スタジオを持たず、イベント会場や社内会議室などに簡易スタジオを設置して撮影を行う「出張型写真館」です。
個人のお客様の場合は、ご希望の場所または事前打ち合わせで伺ったイメージに合うスタジオorロケーションのご提案をさせていただいております。
先日のプロフィール撮影は、ご自宅で17名分のプロフィール写真撮影のご依頼でした。
現地に到着すると、主催者含めた参加者の皆さまがランチ中のため、広間以外の場所で設営してほしいとのご要望がありました。
周囲を探しましたが、確保できるスペースが見つからず、最終的に選んだ場所が下記の庭でした。


外に背景紙を組んで撮影する経験は人生初だったので、背景紙や人物に日差しが漏れたり、撮影に支障をきたすような風が吹かないかなど不安な気持ちが駆け巡りましたが、結果的には滞りなく撮影を終えることができました。
実際に撮影した写真がこちら↓↓

では、ここからは普段プロフィール撮影を行う際にカメラマンとしてどんな所を意識しているかを綴っていきたいと思います。
表情に目がいく仕掛け
まず、プロフィール撮影で私が大切にしていることの1つは、コミュニケーションを通じて引き出された表情を、細かく詰めていきながら瞬時に自然な瞬間(感情が表れた状態)を切り取り、人柄が伝わる写真に仕上げることです。
背景にはグレーバックを使用して、肌よりも濃い影をしっかり落とすことで、真っ先に被写体の表情に視線が向かいやすくして撮ることが多いです。
また、ライティング調整の際は、背景紙に人物の影が映り込んで窮屈な印象を与えないように、背景紙と被写体の間は約2m距離を離し、床に影を落とすことを意識しています。
ところで、ライティングの角度ひとつで被写体に与える印象を変えることができるのをご存知でしょうか?
一般的に、自然な表情を引き出したい場合には、左側から光を当てるのが効果的とされています。
その理由は、人は視線が左から右へ流れる習慣があるためです。
目は明るいものから知覚するため、光の向きと視線の流れを一致させることで、より自然な印象を与えることができます。
さらに、左側からのライティングに合わせて半身の姿勢をとることで、顔の左側が撮影されやすくなり、右脳(芸術性・創造性を司る)が感情表現をより引き出すことにもつながります。
興味深い話として、学校生活で左側の窓から入る光を浴びながら授業を受けて育ったことも、左側からの光を「自然」と感じる要因の1つになっていると言われています。

これは、日本人に右利きが多いため、右側に窓があると手元に影ができてしまうことから、左側に窓を設ける設計が採用されたそうです。
一方、美術室の窓が右(北)側に設置されているケースが多いのは、日光の影響を抑えるためのようです。
南側に窓を設けると時間の経過によって影の形が変わり、デッサンに支障をきたす恐れがあったとのことです。
今回の撮影では、コミュニケーションを通じて生まれた自然な表情を収める狙いがあったことから左側にライティングを組み、
表情が影に食われないよう細かく調整して撮影をおこないました。
なお、印象的でインパクトのある演出をしたい場合には、右側からのライティングが有効的だと言われています。
加えて、ポスターやSNSなど縦書きデザインの写真では、視線が右上から左下へと流れるため、右側からの光はデザイン面で写真を整理しやすくなります。
ただし、プロフィール写真は多用途で使用されるケースも多いため、私は左右両側から撮影することを心がけています。
これにより、被写体には左右の違いを楽しんでもらったり、自分が「効き顔」だと思っていた顔の向きも表情があれば案外関係がなかったと新しい発見に繋がることもあります。
また、表情に視線を集めるための工夫として、顔を写真の中心に配置することを意識しています。
特に、メディアサイトやSNSのアイコンとして使用する場合には、上1/3ラインに目の位置を合わせることで、視線誘導がより効果的になります。
自然な表情にこだわる理由
ビジネスプロフィール写真の撮影において、私は自然な表情にこだわることが多いと感じています。
では、なぜ自然な表情に重きを置くのでしょうか?
その理由はズバリ、セルフブランディングに効果的だからです。
『自分自身が商品であれ』という言葉があるように、SNSを中心に個人ブランディングやビジネス関係の構築において、
自然な表情(素顔)こそが他者とのコミュニケーションにおける信頼感を生み出し、仕事のプロセスや結果に対する期待値を高める役割があるからです。
人柄だけでなく、仕事に対する姿勢や人間性といったその人固有の魅力を引き出すためにも、名刺代わりとなる宣材(宣伝材料)写真は、
みんなが見ている自然な表情にこそ価値が生まれると思っています。
特に、対面前に形成される「第0印象」は、ビジネスシーンにおいて非常に重要です。
実際、採用活動における調査では、80.7%の採用担当者が「第0印象は第1印象に影響する」と回答している統計データもあります。
また、エントリーシートや履歴書の写真によって「自社に合うかどうかがわかる」と答えた割合も46.2%にのぼるという調査もあります。
参照元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000450.000006496.html
近年では、企業のホームページや名刺に顔写真を載せるケースも増え、ビジネスチャットやオンライン会議の普及に伴い、顔写真を使うシーンがますます増えています。
顔写真入りの名刺はビジネスマッチングの効果を高める役割があります。
写真があることで、その人の印象を思い出しやすくなり、会話した内容まで想起させる効果が期待できるからです。
表情は、その人の性格や仕事への姿勢を瞬時に伝える自分自身の象徴とも言えます。
そのため、対面時と同じような自然な表情のプロフィール写真こそが、良好な関係構築に繋がる鍵になると考えています。
eMseedでは今後も、自然な表情にこだわった撮影を続けて、お客様の魅力を最大限に引き出すお手伝いをしていきたいと考えています。
自然体の撮影とは?
「自然な表情や姿を写真に収めます」という撮影スタイルは巷でもよく耳にします。
そこで、今回は私自身が考える「自然体の撮影とは何か」に焦点を当て、今後のお客様との共通理解を深め、
よりスムーズな意思疎通の一助となればと思い、お話しさせていただきます。
自然な撮影を行う際に、私がまず意識していることは、「自然=ありのまま」ということなので、自然界の環境に近い状況を再現することを心がけています。
スタジオ撮影では、1灯ライティングで太陽のような光環境を作り出し、ロケ撮影では自然光を活用するもしくは必要に応じて遮光し、1灯を自然な視線角度(左上)からあてることを意識しています。
特に表情には人の感情や気持ちが宿るため、光の軸をしっかりと面で受けて、表情に目が引きつけられる仕掛けをつくります。
また、背景には被写体の肌より明るい配色は避けて、主役が引き立つよう工夫します。
影の位置や濃さ、階調は、撮影したい雰囲気や印象によってライティング方法が変わります。
写真の用途が事前に決まっている場合は、見せたい部分に影が干渉しないよう、1灯の位置を細かく調整します。
自然光撮影では、時間帯による太陽の位置や天候への配慮が常用になってきます。
また、季節も光の質に影響を与えます。
例えば、夏に比べて冬は乾燥し、湿度が低下することで大気が澄み、光の直進性が強まることで結果として影のエッジがくっきり出やすくなる傾向にあります。
撮影中は、機材の設定をすべてカメラに任せ、私はシャッター操作1点に集中しています。
これにより被写体とのコミュニケーションに時間を割き、細かな表情を引き出しながら瞬時に撮影できる体制を整えています。
さらに、自然な撮影ではできる限り撮影時間を短くすることを意識しています。
撮影が短いと聞くと、少し物足りなさや不安を抱いてしまうかもしれませんが、撮影が早いというのはポジティブな発想だと捉えているからです。
良い写真がきちんと撮れていれば、撮影時間が短いに越したことはなく、1つのパターンで良い表情が撮れたら次のカット、それが撮れたらまた次のカットと撮っていく。
そして最終的には希望のパターンにバリエーションをプラスしてお見せしていくスタイルです。
この発想に至ったのは、私がカメラを学び始めた頃に出会った写真家鈴木心さんの考え方が軸になっています。
最後に
eMseedが展開するビジネスプロフィール写真や法人向け商用写真の原点となり、今も大きな影響を受け続けている、
鈴木心さんの著書『撮った日が、記念日。』やワークショップ。
その中で、私自身が特に印象に残ったメッセージを最後にご紹介し、本稿の締めくくりとさせていただきます。
〝良い写真ってどこにあるのでしょう?そして、誰が決めるのでしょうか?そう考えてみると教科書的な「良い写真」なんて存在しないことに気付くはずです。
写真の好き嫌いも。良し悪しも。撮影者ではなく鑑賞者の価値観によって評価される。ある写真に楽しさを感じる人がいれば、悲しみを感じる人もいるでしょう。
受け手の価値観はその方の生い立ちによって形成されている。自然界がそうであるように、価値観というのは多様であることが自然なのです。
だから、「良い写」なんて求めても仕方がない。
では、「良い写真体験」はいかがでしょうか?もう少し焦点が合ってくるかもしれない。「楽しい写真体験」と「悲しい写真体験」、どちらを「良い」と感じる人が多いでしょうか?
そうすると、ほら、見えてきますね。楽しい写真体験は、良い写真かもしれない。良い写真体験を通じて得られた写真は「良い写真」になる可能性が高い。〟
参照元:撮った日が、記念日。
〝良い表情とは、あなたのことを周りの人がいつも見ている表情だと思っている。怒っている人は怒っている表情でよいし、泣いている人も泣いている表情でよい。
喜怒哀楽どれも自然な表情である。
自分自身では見ることのできない自然な自分の表情を僕らが撮影を通じてお見せすることで、ご自身の本当の姿を体験していただきたいと思っているので僕らは会話をする。〟
参照元:写真がうまくなっちゃうワークショップから